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世界の歴史の中のネックレス

まるで今のファッションスタイル?〜2000年前のネックレス〜

(※1)Photo credit: Foter.com / CC BY

1枚の肖像画(※1)をご覧ください。

これは、石など(※2)を細かく砕き、ひとつひとつ選別して貼りながら形にしてゆく“モザイク”という手法で描かれたものですが、まるで絵の具と筆で描いたかのように滑らかで写実的です。唇の艶や、頬がほんのり薔薇色に染まっている様子、透ける生地ごしに見える黒地に金の刺繍を施した着衣などが、素材の豊かな中間色を活かして、細密に表現されています。
※2 このモザイクには玄武岩や石灰岩などが使われています。

女性が着けている真珠のネックレスは、金に真珠などを嵌め込んだようなパーツをトップに取り付けた、凝ったデザインです。真珠の粒はそろっていて、瞳の大きさと比較するとおよそ7〜8mmぐらいかと思われます。ネックレスの長さはチョーカーよりやや長め、プリンセスと呼ばれる43cmぐらいの長さのようです。ふわふわとした薄い生地を重ねたレイヤースタイルのような襟もとに、パールネックレスが実にバランス良く似合っています。
では、この肖像画は一体いつごろのものなのでしょうか? 実は、これは世界遺産のポンペイ遺跡(イタリア)から見つかったもの。ポンペイが火山灰に埋まったのが西暦79年ですから、今からおよそ2000年近くも前のもの、ということになります(※3)
※3 所蔵元の美術館の記録では、紀元前20年から西暦45年ごろのものと推定されています。

(※4)

一方、こちらの図面(※4)は、今から100年ほど前に出版された真珠に関する本「THE BOOK OF THE PEARL」の図版です。

9種掲載されているジュエリーのうち、下半分にかけてアルファベットの“U”字のように飾ったパールネックレスが描かれています。このネックレスは、古代イランの遺跡“スーサ”で見つかった、およそ2300年前あるいはそれ以前のものとされています(※5)
※5 年代については、紀元前350年ごろのもの、紀元前9世紀から6世紀ごろのものなど、複数の説があります。

等間隔に金のパーツをあしらい、パーツと同じモチーフの留め金を両端につけたこのネックレスは、現代女性のジュエリーボックスにそのまま入っていてもおかしくないほど洗練されたデザインです。
真珠のネックレスは糸で繋げたものが多く、時代が古くなればなるほどネックレスとして使われていた時の形をとどめているものは稀ですが、このネックレスの真珠は細い金線で繋げられていたため、2300年もの時を超え、ほぼ完全な形を保ったままで発見されたのでしょう。

ポンペイのモザイク画のネックレスといい、スーサ遺跡のネックレスといい、2000年以上も前に、現代女性のファッションスタイルにすぐにでも合わせられるようなパールネックレスがデザインされていたということには驚かされます。古代にすでに高度なデザインが施されていたということは、言い換えれば、それ以上の長い歴史の中で人々に愛用され続け、早くから洗練されて来たジュエリーは、パールネックレスだと言えるのではないでしょうか。