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世界の歴史の中のネックレス

ネックレスはドレスと一緒に“着付けるもの”!?〜貴婦人の装い〜

現在、私たちが着ている洋服のほとんどは、ミシンで縫製されたものです。また、普段全く気がつかないことですが、ファスナーやボタン、ストレッチ生地などが開発され、とても便利になっているのです。
ミシンやファスナーは、いずれも19世紀になってから広く流通しはじめたもの。それ以前の洋服は、すべて手縫いで作られていました。特に16世紀ごろまでの貴婦人たちのドレスには、着る人の地位をあらわす豪華絢爛な織文様をほどこした、厚手の生地が使われていました。このような生地はとてもしっかりとして伸び縮みがなく、体にフィットさせることなどできません。まして当時の手縫い技術では、縫製そのものが困難だったようです。

図1:パオロ・ヴェロネーゼ画 16世紀

では、図1のようなドレスは、どのように作られていたのでしょうか。実は、いくつかのパーツに分けて仕立てられていました。例えば、胸当て(ストマッカーと言います)、筒状の袖、スカート……といったように、別々のパーツに分かれていたのです。しかも、なんと、貴婦人たちがドレスを着るたびに、いちいちそれらを紐で繋げたり、糸あるいはピンなどで縫い合わせたりしながら着付けていたというのですから、驚きです!

図2:ヘラルト・テル・ボルフ画 17世紀

時代が下り、本体と袖を縫い合わせることができるようになってからも、服の形を整えるために大量のピンを使いながら着つけたと言います。もちろん自分ひとりで着ることはできませんから、図2のように、身支度のたびに、着付けをしてくれる人の介添えが必要でした。

私たちにとっては驚きでも、いにしえの貴婦人たちにとっては、体の上でドレスを組み立てるような着付けも日常生活の一部で、ごく当たり前のことでした。もちろん、ジュエリーの着用法も例外ではありません。やはり身支度のたびに、ドレスの着付けと同様に取り付けることでジュエリーを装っていたようです。縫い合わせる生地のパーツの合わせ目にパールネックレスを添わせたり、上着が体からずれないようにブローチで下着に固定したりということはもちろん、髪につけるヴェールをジュエリーで留める、あるいは、髪を結いながらパールネックレスを編みこんで行く、といった着け方も、普通に行われていたようです。

ネックレス=首もとに着けるもの、という概念で言えば、髪やドレスに飾られるものは、もはや“ネックレス”とは呼べないかもしれません。しかし、貴婦人たちを飾ったパールは、髪にだけ、あるいはドレスにだけ着けられていたわけではなく、ある時は髪に、またある時にはドレスに、そしてある時には首もとに着けられていたのです。

なぜ、そんなに変幻自在なアレンジができたのでしょうか?

次回以降は、パールネックレスが実際に髪やドレスに飾られていた様子を描いた肖像画をお見せしながら、貴婦人たちのコーディネートに欠かせなかったパールネックレスの姿についてご紹介して行きます。