
LOOK BOOK
Style & Story
ジュエリースタイリストの伊藤美佐季さんが提案する「LOOK BOOK」。
“輝く人のジュエリースタイル”をテーマにしたコーディネートを、インタビューを交えてお届けします。
by Yoko Yamanaka
輝きには気持ちを鼓舞したり、
心を癒すパワーがある
映画『ナミビアの砂漠』が、カンヌ映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞したことを皮切りに様々な映画賞を総なめにし、今最も注目を集める映画監督、山中瑶子さん。今までは、あまりジュエリーをつける機会がなかったものの、受賞式などで身につけることも多くなり、少しずつ興味をもちはじめたそう。今回の撮影で特に気に入ったのは耳もとのレイヤード。
「ジュエリーを重ねても、この組み合わせなら気負いなく楽しめる気がしました。“Mシグネチャー”も親しみやすくていいですね」。
実際にジュエリーを纏ってみて感じたのは、本物の輝きが持つパワー。
「気持ちがシャンとして、いい気分になりました! それと同時に、癒しを感じることも。パールは幼い頃、母のネックレスを内緒でつけてみるのが嬉しくて(笑)、ジュエリーの中でも思い入れがあるアイテムです。発光するような白い輝きは、凛としていながらも、安らぎをもたらしてくれる力があると思います」。
装いとは、自信と新しい気分を
もたらしてくれるもの
山中さんのワードローブの基準は、着心地が優しく、シルエットが美しく見えること。普段はお気に入りのセレクトショップで買い物を楽しむことが多いそう。最近では、“プロが選ぶ服の確かさ”に開眼。
「“黒は苦手”と思っていましたが、スタイリストさんが勧めてくれたシルクサテンの服なら重くなりすぎずに着こなせることに気がついて。自分には似合わないと思っていた色やデザインでも、着てみたら意外に好きになれて“未知の自分”に出会えるのが面白いですね」。
活躍の場の広がりに呼応するかのように、お洒落も少しずつ進化しているよう。
「ファッションって、自信と新しい気分をくれるもの。“自分らしさ”にこだわりながらも、新たな発見を楽しんでいけたらと思います」。
世界を舞台に輝く
新進気鋭の映画監督
山中さんは、『ナミビアの砂漠』が本格的な長編第一作目という27歳の新鋭。大舞台での受賞に「実は、いまだにピンと来てない」と笑う。
「こんな賞をいただけるなんてびっくりしましたし、あまり実感もないままに今に至っていて。でも、賞って時代の流れや審査員との相性で決まるものだと思うので、“真に受けてもキリがない”くらいに受けとめるようにしています」。
“世の中も、人生も全部つまらない”というやり場のない感情を抱いたまま生きる21歳の主人公カナを描いたこの作品で、山中さんが伝えたかったことは“曖昧なままでいてもいい”ということ。
「私も含めて、現在の若い世代はSNSやインターネットを使って、最短距離で答えに辿り着くことを求めてしまうところがあります。でも実は、その過程にある無駄なことや間違えることも大事ということを表現できたらと思いました」。
次回作はまだ構想中だが、既に撮りたい作品は見えている。
「これまでは個人にフォーカスするような内容が多かったのですが、次はもっとたくさんの人が出てきて、組織や思惑が交錯するような映画を手掛けてみたいと考えています」。
“彼女らしさ”と
上手く響き合うように
お洒落においても、アーティスティックなセンスをお持ちの山中さん。タイムレスで王道感のあるジュエリーを、コーディネートでエッジを効かせることで、“彼女らしさ”と上手く響き合うようアレンジしました。
例えばリングなら、あえて隙間を開けて空間を生かしたり、親指につけてみたり。耳なら2つのイアリングの間をダイアモンドのラインで繋ぐようにイヤーカフをあしらうなど、つけ方を工夫することで個性を表現しています。
伊藤 美佐季
プロフィール
山中瑶子●映画監督。19歳の時に自主制作した初監督作品『あみこ』がPFFアワード2017で観客賞受賞。『ナミビアの砂漠』が第77回カンヌ映画祭で女性監督としては史上最年少となる国際映画批評家連盟賞を受賞。人生に退屈しながらも、自由に生きようとする主人公を俳優・河合優実氏が演じたことでも話題に。
伊藤美佐季●ジュエリーディレクター、スタイリスト。フィレンツェに遊学、帰国後スタイリストに。旬を上手に取り入れつつ、つける人の個性を活かしたスタイリングは、女性誌のほか多くの女優からも支持が厚い。近著に「そろそろ、ジュエリーが欲しいと思ったら」(ダイヤモンド社)@jewelryconcierge_m
衣装すべて スタイリスト私物